本気ライダー 尾道〜今治 ひた走り
しまなみ海道をウォーキングしたりサイクリングしたりしてみて、実感するのが、かっこいいロードバイクで颯爽と走りぬける本格的なライダーが最近かなり増えてきたということ。尾道~今治間を一日で往復するツワモノも多いのです。全国各地から「走りに」来られている方も多く、それならば、実際に走ってみようじゃないか!走行データもとって公開しようじゃないか!ということに。途中撮影やチェックをはさみながらの走行ですので、ペースは押さえ気味です。「ひたすら走る」方なら2時間半でも楽勝かも。
※この記事は2015年当時のものです。一部情報が古い場合があります。
今回のしまなみライダー
いでっちさん(会社員)・えんぞんさん(会社員)
愛媛県今治市在住の会社員。30歳代と40歳代の中年ライダー。今治市内で活動するサイクリングチームに所属し、休日にはしまなみ海道を中心に今治周辺を走っている。年に数回は大会に出場しているが、走るのは好きだがトレーニングは大嫌いという2人。モットーは「自転車に乗るなら楽しく快適に!!」
ルート | 尾道〜今治 |
距離 | 約71.73km |
走行時間 | 約3時間15分(休憩時間含まない) |
平均速度 | 約22km/h(巡行速度28〜30km/h) |
風弱。かなり暑い8月下旬。ペースは押さえ気味に走ってもらっています。
サイクリングReport
安全に快適にサイクリングを楽しむために、必要最低限の準備は必要。メンテナンスをしっかり行い、安心して出発しよう!
まず走行前のメンテナンスでは、車体本体に異常がないかをチェック。ブレーキ、空気圧点検は必須。タイヤへの空気注入を行なう。走行に必要な装備も忘れずに。前照灯(ヘッドライト)は、自転車を含む全ての車両への装着が義務付けられており、夜間もしくはトンネル内、濃霧、その他視界が50m以下の場合には点灯させなければならない。ベル、リフレクター(反射板)も義務づけられているもの。
サイクリングの持ち物は軽量、コンパクトが基本。自転車でより快適な旅行を楽しむため、必要最小限の持ち物をセレクトする。今回は、サドルバッグの中には、万一に備え工具とパンク修理道具と換えチューブ。その他、携帯空気入れ、携帯食品、ボトルを携行。 水分の補給はサイクリングの必需品。ミネラルウォーターやスポーツドリンクを入れている。携行食は、食べるとすぐにエネルギーに変わるものがおすすめ。
ヘルメットは万一の転倒や事故の際に頭を守ってくれる大切なアイテム。あご紐の締め具合も要注意。ゆるすぎるとヘルメットがずれてしまうので、あごを引いたときにズレないくらいになるよう調節する。
準備が整ったら、さあ出発!
尾道港から、尾道水道を眺めると左手に「尾道大橋」が見える。しかし尾道大橋は狭く危険なので自転車の場合、尾道大橋は通らず近くの「渡船」を利用するのが一般的。今日は、駅に近い「福本渡船」を利用した。ほんの数分だが、のんびりと尾道の街並みを眺めながらの船旅もまた楽しい。渡船料は運航会社によって異なるが100円前後。今回の福本渡船は自転車込で渡船料70円。
船を降りると「向島」さてここからが本番!?どことなく懐かしいレトロな雰囲気が漂う町並みを走り、377号線を西に走ると海に突き当たり左折。しばらく走ると赤い橋をくぐる。これは岩子島とをつなぐ「向島大橋」。海の青と山の緑、そして鮮やかな赤い橋とのコントラストが美しい。
向島での走行距離は約7km。箇所にはサイクリング道の表示はあるものの、島内の道路はサイクリング専用に作られているものではなく、地元の道路そのもの。道なりに進む箇所には表示が少ないので地図で確認しながら進もう。初めての場合、因島大橋への「自転車歩行者進入路」(以下 自歩道)入口が少しわかりにくいかもしれない。因島大橋をくぐり、500m程走ると、左手に標識が立っていて自歩道がある。(橋を過ぎてかなりの距離を走るので少し不安になるかも)
ここから因島大橋にのぼる。因島大橋までの標高差は約50m。道路の高さとしては来島海峡大橋に次いで高いが、勾配が比較的ゆるやかなのでゆっくり走れば大丈夫。
因島大橋は、他の橋と比べて少し変わった構造をしている。自歩道が、自動車道の下につくられており、二段構造。上を車が走っているのだ。構造上、鉄骨でさえぎられていて外の景色はあまりよく見えない。歩行者・自転車用のレーンと原付用レーンを色とブロックで分けているが、この仕切りブロックが15~20cmくらいの微妙な低さのため見えづらく、サイクリストにはキケン。また歩行者が多いので走行には注意が必要だ。
因島橋を渡りきって、因島に入る。サイクリングロードに沿って、因島を半時計周りに走る。
しばらく海沿いを道なりに走り、山側に折れる道に進むと因島フラワーパークの前を通る道。この道はアップダウンがある。サイクリングロードではないが、海側の道を進むこともできるので海を見ながら比較的平坦なルートを走りたい人にはこちらがおすすめ。ただ、車の通行量も多く、あくまでも地元の道路なので注意が必要。推奨ルートではあっても自転車専用道がない箇所、歩道も無く車道を走らねばならないところも点在する。地形的にも、道路状況的にも因島が一番きついかもしれない。
因島フラワーセンターの入り口あたりから下り坂になりそのまま進むと海岸道路に出る。海岸道路沿いには店も多く、食べ物や飲み物も購入しやすい。島の人たちの生活道路だからこそ店も多く便利。それにしてももう少し標識をわかりやすくしてほしいが…。
海沿いを進んでいくと「生口橋」が見え始める。生口橋の自歩道は、因島南ICのすぐ近く。インター進入口を横目に生口橋をくぐり、自歩道へ。
生口橋は全長790mの斜張橋。そのフォルムはとても美しい。風を感じながら爽快に橋を渡る。しまなみ海道サイクリングには「橋までのぼる」ことが不可欠。のぼりは確かにしんどいが、橋の上を走る爽快感を思えばなんてことはない…(と思う)。
生口島のサイクリングロードは、快適なルートだ。この島には、島の外側を1周する317号線がある。この317号線を北側から回るルートと、南側を回るルートのどちらでも可。北ルートのサイクリングロードを走れば、多々羅大橋のスロープまでは坂道はほとんどなし。海沿いを爽快に走ることができる。
途中、平山郁夫美術館、耕山寺、向上寺、ベルカントホールなどが密集する、いわゆる観光地エリアも通るので時間に余裕があれば立ち寄ってほしい。飲食店もたくさんあるので食事も可能。観光地エリアは、人や車が多いので走行には注意しよう。休日は特に観光バスも観光客も多い。
観光地エリアを過ぎると、また海沿いの道が続く。夕陽が島々を茜色に染め沈む光景は本当に美しいそうだ。今回は無理だったけれど、夕暮れに生口島をゆっくりと走るのもまたいいかもしれない。
サンセットビーチを過ぎると、しまなみ海道でも大人気の橋「多々羅大橋」。
多々羅大橋は、しまなみ海道の橋の中でも人気の高い橋。この橋はしまなみ海道に来たからには是非渡ってほしい。爽やかな風が吹き抜け、とにかく快適。走りきってしまうのがもったいないほど。そしてその橋の美しさに魅了されるはず。主塔の高さは220m。これだけ高いのに決して威圧的ではなくまわりの自然に調和している。フラットで走りやすい橋だが、人気のスポットゆえ観光客も多い。歩いて橋を渡っている人も多いので注意して走ろう。
大三島からは愛媛県。橋を渡りきり、一気に下ると、そこには道の駅「多々羅しまなみ公園」。さきほど渡った多々羅大橋がきれいに見えるビューポイントだ。美しい橋を眺めながら一息つくにはぴったりの場所。レストランもあり売店も充実している。
多々羅しまなみ公園を左方向に出て、海沿いのフラットな道を進む。サイクリングロードとして大三島の中で走る距離はわずか5km程度。大三島ICを過ぎ、4kmほど海沿いの道を走るのだが、右手に自歩道の入口があるので見落とさないように注意。そこからは大三島橋を目指して上り坂。坂の途中で、大三島と伯方島の間の急流で知られる鼻栗瀬戸と、大三島橋が一望できる。
大三島大橋は、しまなみ海道の橋の中で最も古い橋だ。アーチ型の小さな橋で、海の難所、鼻栗瀬戸にかけられている。車道と自歩道はきれいに分けられており、広い自転車道で走りやすい。白線で原付と自転車・歩行者を分けているが前後からう原付バイクがやって来るので注意が必要。
大三島橋は、「鼻栗瀬戸」という海の難所にかけられている橋のため、橋から見下ろすと潮の流れの速さに驚くはず。海に架かる橋というよりもまるで川にかけられているように見える。
大三島橋を渡りきると、そこは「伯方島」。伯方島は、橋でつながった島の中で最も小さな島。推奨のサイクリングコースは317号線をまっすぐに走る3kmほどの短いコース。しかし島をかすめる程度の距離なので、もっと伯方島を楽しみたい人には、島を一周してみるのもおすすめ。
今回は、推奨のサイクリングロードを行く。橋を降りて、サイクリングロードに戻る。400mほど走ると、海側に「道の駅 伯方S・Cパーク」という大きな施設。ここは、「しまなみビーチ」というきれいな海水浴場とレストランや売店も併設している「マリンオアシスはかた」がある。休憩はここがオススメ。海を見ながらちょっと一息。向こうに見えるのが、伯方・大島大橋。
道の駅 伯方S・Cパークから500mほど海沿いを走ると、左手にすぐに伯方大島大橋の自歩道が見える。ここから伯方大島大橋に上る。伯方大島大橋を渡るといよいよ最後の島、大島だ。後述するが、実は、次に渡る大島はしまなみで最も難関と言われる島。そのためにも、伯方島はペースダウンして少し体力を温存するのもいい。
伯方・大島大橋は、文字通り「伯方島」と「大島」を結ぶ橋。これで5つの橋を渡ったことになる。しまなみ海道を結ぶ橋は一つ一つ特長があり雰囲気も違う。それも見所のひとつだろう。
橋を一気に渡りきり、大島に上陸。北側の宮窪町側に降りてくる。ここからしばらくは、海沿いの道。潮流を見ながらのサイクリングは爽快。水軍の本拠地でもあった「能島」も見える。ここから船折瀬戸のあたりはしまなみ海道でも最も激しく複雑な潮流で知られている。流れが早いことにあらためて驚く。
海沿いの道から、観光案内所付近で右折。このあたりから上り坂が始まる。島の真ん中を縦断する形で走行するのだが、来島海峡大橋までの間に、2箇所難関の峠越えが待ちうけている。まずは石文化運動公園付近が峠越えの急坂道。この付近ではレンタサイクルを押して上がっている観光客の方をよく見かける。無理をせず自分のペースで走ろう。
吉海町に入った頃から下りになるが、大島南IC手前くらいから再び上り坂。この付近までは、残念ながら景色はあまり楽しめない。大島がしまなみ海道で最も難関といわれるのはこの起伏の激しいサイクリング道ゆえ。国道317号線を走るので自動車、トラックやバスなども多く、大半があまり快適とはいえないが、2つめの坂を上りきると、すばらしい景色が待っている。さあ、最後に待ち構えるのは、クライマックス、「来島海峡大橋」。ゴールはすぐそこだ。
来島海峡大橋の自歩道入口は、よしうみいきいき館と下田水港を過ぎ数100m先の山側にある。ここから橋への最後の上り坂。しまなみ海道最後、そして最長の橋でもある来島海峡大橋は、世界初の三連吊橋。今までの橋の中でも一番高い所にある。他の橋同様、橋まではゆるやかなスロープ。途中で、原付バイクと道が分かれるので要注意。
このスロープはまるで空中を上っているかのような錯覚にとらわれる。スロープを上りきり、橋の上まで上がると、まっすぐにのびる来島海峡大橋。圧巻だ。橋だから平坦だと思っていたが、実際に走ってみると、実はわずかながらアップダウンがある。橋の全長は4,105m。長いのでかなり走り応えはある。
自転車と歩行者とは同じルートを進むことにはなるが、他の橋は原付と同じ場所を走っていた事と比べると、原付バイクがいない分、走行は楽。しかし、人気の観光スポットでもあるこの橋、自転車や歩行者が多い。小さな子供やお年寄りも多い。途中で記念撮影をしたりしているグループも多いので注意しよう。
名残惜しい気持ちで、最後の橋を渡り、ようやくゴール! スロープを下り、一般道に降りて、数100m下ると、サイクリングターミナル「サンライズ糸山」がある。レンタサイクルの乗り捨てはここでも可能。
尾道(渡船場)から「サンライズ糸山」まで、サイクルメーターが示した走行距離は71.73km。平均時速22km/h(順行速度は30km前後。途中撮影で止まることが多かったため、22km/hとなった。)走行時間は約3時間15分。普段30~35km/hで走りなれているサイクリストには物足りないくらいのペースかもしれない。しかし、この景色を楽しみながらならこのくらいがちょうどいいと思う。
途中短い休憩ははさみつつも、一気に走りぬけたしまなみ海道。さすがに疲労感はある。しかしそれ以上の充実感と達成感。自転車好きならとにかく一度は走ってみてほしい。絶景が待っている。(完)